飢餓の瀬戸際に追い込まれたロヒンギャの人々
食料支援の縮小に悲鳴を上げるバングラデシュ
- 2025/4/30
少数派イスラム教徒「ロヒンギャ」がミャンマー国内の迫害から逃れて暮らすバングラデシュの難民キャンプで、資金不足による食料支援が危機的な状況に陥っている。各紙の報道によると、世界食糧計画(WFP)は、4月までに1500万ドルの緊急支援が確保されなければ、現在1人当たり12.5ドルの支援を、6ドルに減額せざるを得ないとしている。

イギリスが世界食糧計画(WFP)に拠出した資金で食糧の配給を受けたロヒンギャの女性 (c)DFID – UK Department for International Development / wikimediacommons
キャンプ内の対立や治安の悪化を懸念
ロヒンギャ難民が110万人以上暮らすといわれるバングラデシュでは、この問題に対する関心が特に高い。バングラデシュの英字紙デイリースターは、3月7日付の社説で「食料支援の削減は、壊滅的な結果をもたらす」と警鐘を鳴らしている。
社説によると、ロヒンギャ難民キャンプの資金不足は今に始まったことではない。前回2023年には、1人当たり8ドルに減額された。社説は、この時にもたらされた結果についてこう述べる。
「減額によって飢餓と栄養不良が急増したと国連は指摘している。数カ月も経たないうちに、キャンプの人口の90%が適切な食事を確保するのが困難な状況となり、15%の子どもたちが栄養不良に苦しんだ。これは、記録上、最も高い割合だ。その結果、削減は後に撤回された」
実際、1人当たり6ドルの食料支援では、「栄養価の高い食事を維持することはできない。最低限の生存レベルを下回る」とまで社説は言う。そのうえで、「国際社会は、ロヒンギャの人々が最低限の必要量でいつまでも生き延びていくとでも思っているのか」と憤る。
そのうえで社説は、「人道支援に頼るしかないロヒンギャの人々にとって、今回の減額は多大な負担になる」と重ねて指摘し、「キャンプ内の緊張が高まり、暴力や犯罪、麻薬取引の増加につながる可能性もある。 絶望感が募り、ロヒンギャ難民がキャンプを脱出しようとするケースが増え、地元住民との対立のリスクが高まる可能性もある」と述べる。
社説は、「こうした状態は、明らかにバングラデシュにとって深刻な課題となっている」と指摘したうえで、こう訴えている。
「だからこそバングラデシュ政府は直ちに国際社会と協議し、資金援助の確約を得るべきだ。国際社会には、ロヒンギャの人々が最低限の生活を送るために必要なものを確実に提供し、自国の課題を抱えながらも彼らを支援するためにあらゆることを行っているバングラデシュを支援する道義的な義務がある」
国連のグテーレス事務総長の訪問を評価
ロヒンギャの悲鳴は、そのままバングラデシュの悲鳴だ。同紙は、3月14日付紙面でも国連のグテーレス事務総長の訪問を機にロヒンギャ問題についての社説を掲載した。
記事によれば、グテーレス事務総長は3月14日、南部コックスバザールの難民キャンプを訪れ、ロヒンギャの人々の暮らしを視察。国際社会に対し、支援を縮小しないよう強く呼びかけたという。
社説は、「グテーレス事務総長がこのタイミングでバングラデシュを訪問した意義はいくら強調しても強調し過ぎることはない」と指摘し、「事務総長はロヒンギャの立場に理解を示しており、勇気付けられる」と評価する。そのうえで、現在の人道危機については、「グテーレス氏がバングラデシュに理解を示し、われわれだけではこの膨大な責任を担い続けることはできないという強いメッセージを国際社会に発信してくれることを期待している」と述べた。
(原文)
バングラデシュ:
https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/rohingya-refugees-pushed-the-brink-starvation-3841621
https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/rohingya-crisis-needs-lasting-solution-3847301