先鋭化する中国とフィリピンの対立 日米はどう対応するのか
台湾危機に加え、新たに顕在化した南シナ海の紛争リスク

  • 2024/7/25

中国式現代化という権威主義体制への対抗策は

 こうした緊張感の中、フィリピンは7月17日、同盟国である米国の支持を受けて中国との間で海上主権をめぐる紛争を処理する新たな話し合いのルートを作ることに同意したことがロイターなどにより報じられた。

 その根拠となるのが、7月2日に調印された「フィリピン・中国海上連絡メカニズムに関する取り決め」だ。この文書によれば、三つの連絡ルートが新たに設けられるという。第一に両国首脳が指定する代表人を通じたホットライン、第二に両国外相および外務次官による外交ルート、第三に両国のコーストガード・海警局による直接ラインだ。

 とはいえ、「そもそも電話で話し合えるぐらいなら今の状況になっていなかった」として、これらの連絡ルートは紛争解決の手段にならないと見る人は多い。                       

独立記念日を前に中国領事館前で集会を開くフィリピンの漁師と活動家たち。係争中の南の中国海における中国の侵略疑惑に抗議するため、ボートのコスチュームを着ている。フィリピン・マカティで2024年6月11日撮影 (c) AP/アフロ

 フィリピンは7月8日、中国の脅威に対抗するために、日本との相互往来を促進する「円滑化協定(RAA)」を締結し、日比関係を準同盟へと引き上げた。両国とも米国の同盟国であるため、日本は今後、米国を介して南シナ海の安全保障に関わりやすくなるという。なお、フィリピンはオーストラリアとの間でも同様の協定を結んでおり、共同軍事演習も増えつつある。実際、フィリピン空軍は7月11日、オーストラリア北部で行われた多国籍空軍演習「ピッチブラック2024」に韓国製FA-50戦闘機12機を持ち込んで参加した。フィリピン空軍のシステムや戦術は現状、かなり遅れているが、こうした共同演習を進める中で空軍防衛の近代化を急ぐという。

 さらにフィリピンは7月18日、スプラトリーでフィリピンが実効支配しているパグアサ島における滑走路の拡張工事を行うことを発表。この島は南シナ海において戦略的地位が高いことから、これも南シナ海で実効支配を拡大させつつある中国に対抗する動きとして注目されている。

 習近平国家主席の三期目の政権運営が改革開放路線と決別し、中国式現代化という名の権威主義体制を強化していく方針で固まったとするなら、中国の南シナ海における脅威は話し合いによって軽減できる性質のものではない。南シナ海の平和維持は、フィリピンや米国、そして同盟諸国と連携して、戦争に至らないようにグレーゾーンの軍事アクションをコントロールしていくしか方法はなくなっていると言えよう。

 

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