「永遠の命」を欲する中ロと北朝鮮の指導者たち
雑談に垣間見えた果てなき権力欲
- 2025/11/4
中国の習近平国家主席は9月上旬、さまざまな場面で、中国が「グローバルサウス」の中核にあることを内外に示した。8月31日から9月1日には、中国の天津で上海協力機構(SCO)の首脳会議を開き、ロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相らが参加した。その後、9月3日には、北京で抗日戦争勝利80周年の記念行事を開催し、プーチン大統領、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記らが出席した。
中国やロシアが、アメリカや欧州諸国に対抗する新たな勢力の枢軸として注目されるなか、9月3日の記念行事では、ある「雑談」が話題になった。習氏、プーチン氏、金氏の3人が交わした「人間の寿命論」である。
共同通信によると、3人の雑談は記念行事の観覧席に向かう途中、歩きながら交わされがライブ配信で流れたという。習主席は人間の寿命について、「今世紀には150歳まで生きることができるようになる可能性がある」と語り、プーチン大統領は「不死さえも実現できる」などと応じたという。両氏はともに72歳、金総書記は41歳。

2025年9月3日、北京で開催された抗日戦争勝利80周年を祝う軍事パレードに先立ち、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩総書記が並んでいる (c) Kremlin.ru / wikimediacommons
国家をあげた「老化対策」研究センター
この会話にかみついたのが、インドの英字メディア、タイムズオブインディアだ。9月4日付けの社説「権力の時代」でこのやり取りをとりあげた。
社説は、「プーチン大統領と習主席の不老不死のやりとりは、長寿よりも、無限の権力への欲望を示す」と述べた。すでに中国では2018年に国家主席の任期制限が撤廃されており、習氏が終身権力を握る道が開かれている。また、プーチン大統領も憲法を改正し、2036年、同氏が83歳になるまで権力を握る道を開いた。
こうした法制度の動きに加えて、社説は、科学の発展が導く不気味な未来について言及する。「傲慢が招く混乱はさておき、科学と政治が何を成し遂げるか、誰にも予測できない。昨年、イギリスのガーディアン紙が報じたロシアメディアの調査によれば、ロシア政府はプーチン大統領の指示で研究センターを設立した。ここでは培養細胞を用いた臓器プリント技術など、老化対策の研究が進められていると報じられる」。
「プーチン大統領が習主席の耳元でささやいた『人間の臓器は継続的に移植可能だ。不死さえ実現できる』という言葉。これは単なる軽口ではなく、同時代の指導者に向けた力強い売り込みだったのかもしれない」と社説は述べている。
戦争で毎分毎秒、命が奪われている裏側で、権力者たちが「永遠の命」について語り合うという理不尽に、私たちはもっと憤っていい。
欧米諸国は「グローバルないじめっ子」
マレーシアの英字紙ニューストレイツタイムズは、9月2日付の社説で、中国を舞台とした一連の行事にからめて、自国の「立ち位置」について考察している。
社説は、抗日戦争勝利80周年の記念行事に出席しなかった「北半球の指導者たち」、つまり欧米諸国について、「5月初旬にロシアが『勝利パレード』をしたときも彼らは出席しなかった」と指摘。ただし「これを、ロシアや中国が招待しなかったと非難するのは筋違いだ」と述べる。
というのも、社説によれば、ロシアや中国を「グローバルないじめっ子」と表現する。欧米諸国こそが「世界のあらゆる問題の主因」であり、「グローバルないじめっ子」だというのだ。「欧米諸国は道徳的優位を装い、『我々の価値観』を押し付けようとする。彼らは自尊心を傷つけられ、嫉妬心に満ちている」と、社説の論調は厳しい。
とはいえ、同紙は中国やロシアに肩入れしているわけでもない。ただ、「ロシアや中国に対抗する欧米諸国のあり方に黙って従うつもりはない」と宣言しているのだ。
さらに社説は、国連安全保障理事会についても言及する。「国連安全保障理事会は、今や一つの国に媚びへつらうための場に過ぎない。西側諸国は自らを責めるほかない。なぜなら、グローバルサウスの国々が、新たな世界秩序――長らく無視されてきた発展途上国や新興国に発言権を与えるという多極的な秩序――を模索する状況に追いやったのは、彼ら自身なのだから」
グローバルサウスの枢軸となる国は、必ずしも中国やロシアとは限らない。どのような価値観が軸になり、どのような「力」が求心力を持つのか。グローバルサウスの軸はまだ定まっていない。
(原文)
インド:
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/age-of-power-2/
マレーシア:
https://www.nst.com.my/opinion/leaders/2025/09/1268919/nst-leader-wars-and-global-bullies












