アメリカのトランプ外交に厳しいまなざしを寄せるインド
和平の仲介は「自己陶酔」、ベネズエラへの軍事行動は「厚顔無恥」と批判
- 2026/1/7
アメリカの第二次トランプ政権は、発足した当初はインドと接近する姿勢が見えたものの、インドがロシアとの距離を縮めるにしたがって、インドからの輸入品に最大50%の追加関税を発動するなど、対立姿勢を強めている。インドの英字紙はトランプ政権の外交政策をどのように見ているのか。同時期に社説で取り上げた2紙の報道ぶりを紹介する。
和平合意の崩壊に気付かない「平和の大統領」
インドの英字紙タイムスオブインディアは2025年12月11日付で、「合意は不成立:崩壊しつつあるトランプ和平協定 本人は認めず」と題した社説を掲載した。
「トランプ和平協定は、『ハンプティ・ダンプティ症候群』に陥っている」。この日の同紙の社説はこんな印象的な書き出しで始まる。ハンプティ・ダンプティとは、イギリスの童謡に登場する卵の形をしたキャラクターで、塀から落ちて粉々になってしまい、誰も元に戻せなかったという内容から、「取り返しのつかないこと」の比喩としてしばしば用いられる表現だ。
社説は、トランプ大統領がウクライナやガザ、タイとカンボジア、そしてコンゴ民主共和国とルワンダなど、世界各地で「仲介」したと主張する和平への動きが軌道に乗っていない、と指摘する。
「いわゆる『平和の大統領』は、ガザ和平計画も掌握できていないようだ。ハマスとイスラエル国防軍の間で依然として散発的な戦闘が報告され、計画は宙ぶらりんの状態にある」。社説はこう述べたうえで、「実際に維持されている停戦は、トランプ大統領が全く関与していない、インドとパキスタンの間の停戦だけである」と続け、「和平は勅令によって成し遂げられるものではない。忍耐と、紛争の根本原因への対処、解決策の模索が必要だ。そしてそれは、不動産取引でもない」と指摘する。
「各国は、トランプ大統領のブルドーザー式の和平工作を利用しているに過ぎない。カメラの前で停戦文書に署名し、彼の機嫌を取った後で、第二ラウンドの戦いに備える。しかし、『取引の芸術の達人』は自己陶酔しており、巧みに利用されていることに気付いていない」
タイムスオブインディアの社説は、インド紙らしいユーモアと皮肉によって、トランプ政権の外交をこう鋭く批判している。
国際秩序に対する露骨な不正
一方、インドの別の英字紙ヒンドゥーは、2025年12月17日付の社説で、アメリカによるベネズエラに対する軍事行動を「露骨な不正行為」だと批判している。
ベネズエラをめぐっては、トランプ大統領がマドゥロ大統領について麻薬の密輸に関与していると主張。麻薬運搬船とみなした船を攻撃したり、石油タンカーを拿捕したりと軍事的な圧力を強め、ベネズエラ側が強く反発していたが、2025年1月3日、アメリカ軍がマドゥロ大統領に対して本格的な軍事作戦を行い、マドゥロ氏とその妻を拘束した。
この社説は軍事作戦前に掲載されたものであるものの、「アメリカ側にマドゥロ政権の交代を画策する動きがある」として、「こうした露骨な動きや厚顔無恥な行為は、アメリカの外交政策の最低さを更新するものだ」と厳しく批判し、次のように警鐘を鳴らした。
「マドゥロ氏は、2024年に実施された大統領選挙の結果を操作した疑いで告発を受けている人物である。また、ベネズエラの経済が壊滅的に崩壊したことについても、同政権に重大な責任がある。しかし、いくらそうした過ちがあったからといって、トランプ政権の敵対的なアプローチが正当化されるわけではない。アメリカの行為は、国際秩序のルールを完全に無視するものだ」
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ノーベル平和賞に執着するトランプ大統領にとって、外交は自身の栄光を手にするための手段にすぎないのだろうか。これら2紙の社説には、パキスタンとの対立に「トランプ大統領が勝手に介入してきた」という立場のインドの憤りがにじみ出ている。結局、トランプ大統領が欲しいのは「和平合意」であって、「平和」ではないのだろう。













