ようこそ、不公平な貿易の時代へ
「トランプ関税」に合意したインドネシアとフィリピンの報道ぶりは
- 2025/8/7
アメリカのトランプ大統領は7月31日、日本を含む数十カ国からの輸入品にかける新しい関税に関する大統領令に署名した。日本との間では15%の相互関税を課すことで合意。カナダへは新たに35%の関税を課した。新税率は、アメリカ東部時間の8月7日午前0時1分(日本時間午後1時1分)に発動した。「トランプ関税」の交渉過程について東南アジアはどう報じたか、紹介する。
「得るものは何もなかった、失っただけ」
「トランプ関税」は、アジア諸国も振り回している。インドネシアのプラボウォ大統領は7月16日、トランプ大統領との直接協議を経て、19%に設定することで合意した。他方、アメリカの製品はインドネシアへ無税で輸出できるようになった。さらに、インドネシア側が米国産エネルギーを150億ドル、農産品を45億ドル相当購入し、アメリカのボーイング製航空機50機を調達することも発表された。
この合意について、インドネシアの英字紙ジャカルタポストは、7月28日付の社説で「不公平な貿易の時代の始まりだ」と指摘した。
社説は、今回の合意について「はじめから不利な立場に置かれていたため、そうなることは予想されていた」と述べる。当初、インドネシアに対して設定されていた関税は32%だった。最終的に19%にまで下がったことは、「インドネシアにとって喜ばしい」としたうえで、「過大な関税が交渉開始の基盤となっていたため、通常の貿易状態を維持することが最良のシナリオだった」と述べる。
そのうえで、今回の関税合意については、「まったく公平ではない」と批判する。
「もし32%の関税が適用されれば、ほとんどのインドネシアの輸出業者は世界最大の消費市場であるアメリカへのアクセスが、事実上、遮断されることになる。そのため、経済調整担当大臣率いる交渉団は、代替案が魅力的でないとしても、その状況を回避しなければならないという大きな圧力にさらされていた。私たちの立場からすると、交渉の目的はウィンウィンを実現することではなく、損害をいかに最小化するかということだったと言わざるを得ない。ウィンウィンは最初から選択肢にすらなかったのだ。私たちにとって、今回の交渉で得るものは何もなかった。ただ、失っただけだ」
さらに社説は、「率直に言えば、貿易相手国へのアメリカの姿勢は、強盗が財布を寄越すように要求し、被害者が追加の恩恵を約束すれば現金の一部で妥協するという行為に似ている」と、厳しく非難した。
懸念される国内産業への打撃
インドネシアと同様に、関税を下げる代わりに米国産品の輸入関税をゼロにするという約束をしたのが、フィリピンだ。フィリピンも、19%の関税率で合意した。フィリピンの英字紙デイリーインクワイアラーは、7月30日付の社説でトランプ関税を取り上げた。
社説は、アメリカ国務省が関税交渉と並行して、フィリピンに6000万ドルの資金援助を提供したことについて、「フィリピンへのゆるぎないコミットメントを表明するものだ」との見方を示したうえで、「フィリピンは不利な立場に置かれたわけではない」とフィリピン政府が強調していることに一定の理解を示す。
そのうえで、「だからといって、関税が国内産業に影響をもたらさないわけではない」と指摘。最も影響を受けるセクターとして、食品・野菜セクター、繊維産業、靴産業を挙げる。社説は、合意の詳細についてはまだ最終決定されていないとし、「最悪のシナリオは、フィリピンへの関税免除対象製品リストが恣意的に拡大され、地元産業に深刻な打撃を与えることだ」とし、「少なくとも、完全な透明性を確保することが今、最低限、求められることだ」と、強調した。
(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2025/07/28/the-age-of-unfair-trade.html
フィリピン:
https://opinion.inquirer.net/185027/pushing-for-better-trade-deal













