権力に抵抗するミャンマーの表現者たち
食とアートからクーデターと現地の情勢を考える

  • 2021/10/17

アーティストが真の自由を手にする日
 軍による弾圧が強まる中でも、現地では国軍を風刺するパフォーマンスや、プラカードと蝋燭を道路に並べた無人デモなど、趣向を凝らした「抵抗のアート」が次々と生まれた。危険を冒してでも人々がこれほどまでに抵抗を続ける理由について、北角さんは「クーデターを終わらせない限り、自分たちは二度と表現することができないという思いがある」と指摘。これを受け、伊藤さんも「アーティストたちの作品がアップされていたウェブサイトが今は閉じられ、連絡がつかない状態だ」と、危機感をあらわにした。
 2人の話を聞きながら、中山さんは「日本でも不自由さが増えつつある。アートがなぜ必要なのかという声すらあるが、アートは人を導くもの。前を向くための希望を持つことが難しい状況であればあるほど、文化が大切」だと指摘。「軍事政権の社会でアーティストがどう身を置くのか、自分ならどうするだろうかと考えさせられる」と話した。

 クーデターから時間が経つにつれ、ミャンマーに対する日本人の関心の低下が危惧されているが、長年、声を上げては扇動や名誉棄損などの罪で拘束され、抑え込まれてきた現地のアーティストや表現者らの思いは、この日、ミルクティーの甘い香りとともに聴衆に届いただろうか。窮状を訴え、救いを求め、抵抗を呼びかけるという悲しい目的だけではなく、彼らが真に自由にアートを通じて表現できる日が来ることを心から願う。

左から順に、北角裕樹さん、中山晴奈さん、伊藤礼菜さん

 

 

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