ASEANへの復帰を探るミャンマー親軍政権 問われる「対話」の条件
関係改善へ向け布石を打つミャンマー軍 タイとインドネシア紙は安易な譲歩を警戒

  • 2026/8/17

 ミャンマーの親軍政権で大統領を名乗るミン・アウン・フライン氏が8月6日、隣国タイを訪れ、アヌティン首相と会談した。2021年2月のクーデター以降、ミャンマー軍は同国の公式な代表として認められず、東南アジア諸国連合(ASEAN)の関連会合への公式参加も認められてこなかった。ASEANとの関係改善を目指す親軍政権は、これまでも対話に積極的だったタイとの関係を深め、その足がかりにしようとしている。

 クーデターから5年余り。国際社会との関係修復に向けた動きを活発化させるミャンマーの親軍政権をASEANはどう見ているのか。タイとインドネシアの主要紙は、ともに「対話」の必要性を認めながらも、具体的な行動を伴わない関係改善には慎重な姿勢を示している。

ASEAN本部の前でたなびく加盟国の国旗© Kaliper1 / wikimedia commons

「良き隣国」だからこそ譲れないもの

 タイの英字紙バンコク・ポストは、ミンアウンフライン氏の来訪前日の8月5日付社説「Myanmar visit tests ties(ミャンマー訪問が両国関係を試す)」で、今回の首脳会談がタイ・ミャンマー関係の試金石になると論じた。

 社説はまず、ミャンマー側が今回の訪問に向けて「入念に準備を進めてきた」と見る。その一つが、8月3日に明らかにされた、民主化指導者アウンサンスーチー氏と赤十字国際委員会(ICRC)の現地代表との面会だ。面会時の写真も公開されており、社説は「ミンアウンフライン氏側が自らのペースと条件で国際社会とのかかわりを再開しようとしている」こと表れだと指摘した。

 しかし、タイ側にとって今回の会談で話し合うべき問題は、外交関係の改善だけではない。社説は「麻薬や人身売買、国際的な詐欺ネットワーク、さらにはミャンマー北部シャン州での希土類採掘に伴う水質汚染など、国境を越えてタイ国民の生活に影響を及ぼす問題が山積している」と訴える。

 社説によると、2021年にミャンマー軍が実権を掌握して以来、ミャンマー国境周辺では密輸や国際詐欺などの違法活動が拡大している。また、シャン州の山岳地帯では外国企業による無計画かつ無責任な開発が進み、環境などへの影響も懸念されている。

 これらの状況を踏まえ、社説は今回の訪問がミャンマーのみならず、タイ政府にとっても「断固たる姿勢」を示せるかどうかの試金石になる、と主張する。

 社説は、「タイは常にミャンマーにとって理解ある隣国であり続けた」としたうえで、「良き隣国であるということは、国境の違法活動や水質汚染を当然のこととして容認することを意味するものではない」と強調。ティン首相に、対話を続ける「寛大さ」と、譲るべきでない問題では譲らない「強硬さ」の両方を求めている。

歩みよりは「具体的な行動」が必要

 一方、ASEANの大国、インドネシアはミャンマー情勢をどう見ているのか。

 インドネシアの英字紙ジャカルタポストは、ASEANが今年創設から59年を迎えるにあたって掲載した、8月7日付の社説で、地域が抱えるさまざまな課題を取り上げた。なかでも、ミャンマー問題については、「近い将来に克服することが難しい課題の一つ」と位置付けている。

 ASEANは2021年のクーデター後、暴力の即時停止や関係者による建設的な対話などを盛り込んだ「5項目の合意」をミャンマー軍側と交わした。しかし、社説は、それから5年あまり経ってもほとんど進展が見られないと批判。「唯一とられた具体的な措置」は、アウン・サン・スー・チー氏とICRC現地代表との面会だけだと指摘したうえで、「それも、5項目の合意が求める停戦や対話とはほど遠い」としている。

 「ミャンマー側が自らの公約に対する有意な証拠を何ひとつ示していない状況で、ASEANがミャンマーに対してさらなる柔軟性を示すことをどうして期待できようか」。社説はそう問いかけ、関係改善を望むのであれば、まずミャンマー側が具体的な行動によって意思を示すべきだとの立場を鮮明にする。

 そのうえで、「ASEANは、さまざまな課題や加盟国間の意見の違いを抱えながらも、欧州連合(EU)に次いで2番目に成功した地域ブロックとして国際的に認められている」と強調。「ASEANの信頼性を脅かす亀裂を、儀礼的な団結で覆い隠すようなことはあってはならない」と、訴えている。

                  *

 ミャンマーとの関係を動かすためには対話が必要だというのが、二紙の主張だ。しかし、対話することと、相手の主張を無条件に受け入れることは同じではない。タイ紙は隣国として直面する具体的な問題への対応を求め、インドネシア紙はASEANとの「5項目の合意」を行動で示すよう迫る。

 二つの社説に共通するのは、関係改善には「対話」だけでなく、それに伴う具体的な行動が必要だという視点だ。

 

(原文)

タイ:

https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/3296690/myanmar-visit-tests-ties

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2026/08/08/asean-at-59-time-to-deliver?utm_source=(direct)&utm_medium=channel_editorial

 

 

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