パキスタンで深刻化する非ムスリムへの偏見
教育の場にも差別がまん延
- 2019/8/9
根深い「不寛容の土壌」
イスラム教徒が97%を占めるとされるパキスタン。国教でもあるイスラム教だが、それは信仰の自由を制限するものではないはずだ。しかし、実態はと言えば、社会の中で非ムスリムが差別されているという。パキスタンの英字紙「ドーン」の社説が採り上げたのは、教育の現場での非ムスリムへの差別と偏見だ。
この社説が出るきっかけになったのは、2つのNGOがまとめた「宗教的少数派」への差別や偏見に関する調査結果だった。社説によると、Institute of Development Research and Corresponding Capabilities とパキスタン・ヒューマンライツ・コミッションが実施した調査の結果は、「パキスタン社会がどのように宗教的少数派を扱っているかを如実に示す、大変残念なものであると同時に、文明化された国と言われる他の国々に大きく遅れをとっていることを示すものだった」という。
例えば、調査対象となった非ムスリムの生徒のうち、約60%が「差別を受けたり、差別されたりしていると感じたことがある」と答え、非ムスリムの保護者の約70%が「子どもが差別を受けている」と答えている。また、非ムスリムの教師のうち70%が「信仰に基づく差別を受けたことがある」と答えた。これを受け、社説は「このような宗教的な差別を受けた人たちは表に出てきづらいことを考えると、実態はもっとひどいだろう」との見方を示した上で、パキスタン社会には「長い時をかけて培われた不寛容の土壌」があると指摘する。「その被害を受けたことがない非ムスリムはほとんどいないのではないか。それほどに偏見は根深い」。