間近に迫る米大統領選と不法移民問題の行方
トランプ政権とハリス政権で国境政策に違いはあるか
- 2024/10/12
どちらが勝っても米国は内向きに
とはいえ、「第2次トランプ政権」の場合、不法移民たちの在留資格の合法化は「市民権付与への道を伴わない永住権」の形になるだろう。彼らが法を犯して入国した事実は変わらず、仮に在留を許されても、米国人として投票権を持つことは筋が通らないからだ。
事実、バイデン・ハリス陣営が不法移民に市民権(つまり投票資格)を与える計画を繰り返し打ち出すことに対しては、「民主党政権下で不法入国が許された人々に、民主党へ投票してもらおうとしているのではないか」という批判が根強い。トランプ前大統領が返り咲けば、不法移民の一部が合法化されても、市民権は付与されないと思われる。
これに対し、犯罪歴のある人や、米経済への貢献が低いとみなされた不法移民は強制退去の対象とされる可能性がある。さらに、強制送還の予算や人員が十分に確保できなかった場合、不法移民が米国に滞在し続けることが難しくなるように在留資格取り締まりを強化し、自ら米国を退去するよう仕向ける案も浮上している。
現在のバイデン・ハリス政権下で入境した270万人以上の不法移民のうち、半分の130万人を4年かけて送還するあたりが目標とされるのではないか。もちろん、過去の「実績」に照らせば、実際の送還数は目標値よりもかなり低くなるだろう。
いずれにせよ、2023年だけでも160万人の移民が米国に押し寄せ、受け入れ能力は限界に達している。7月に実施された米調査企業ギャラップの世論調査では、「米国への移民は減らすべき」という回答が55%と過半数を占め、1年前の41%から14ポイントも急上昇している。つまり、民主党のハリス候補が当選しても、従前の「開かれた国境」政策は民意に従い修正せざるを得なくなるだろう。世論を納得させるために、「ハリス政権」も少数ながら強制送還に踏み切るかも知れない。
米国は内向きになっており、どちらの陣営が勝利しても、その国境は人的にも経済的にもますます閉ざされてゆくと思われる。