パレスチナ占領終結を求める「取るに足らない」国連決議
アジア紙が読み解く決議の意義とネタニヤフの目論見

  • 2024/10/10

 「ヨルダン川西岸における違法な占拠を1年以内に中止すること」。
 国連総会で9月18日、イスラエルに対して占領の終結を求める決議が採択された。日本やフランスを含む124カ国が賛成したが、米国を含む14カ国は反対し、英国など43カ国は棄権した。

国連総会でイスラエルによるパレスチナ占領を1年以内に終わらせるよう要求する決議が採択された翌日、安全保障理事会で演説するパレスチナのリヤード・マンスール国連大使。 2024年9月19日撮影 (c) AP/アフロ

「取るに足らない」決議、それでも「大きな前進」
 この決議について、インドネシアの英字紙ジャカルタポストは9月21日付の社説で「取るに足らないものだが、象徴的な国連決議」だと評した。
 社説は、「この決議は取るに足らないものかもしれないが、ユダヤ国家がパレスチナに行ってきた不当な行為に対する世界中の感情を象徴するものだ」として、法的拘束力はないものの、イスラエルの不当性を強くアピールする決議だと評価した。
 決議の採択においては、多くのグローバルサウスと言われる国々が賛成に回った。社説は「世界のほとんどが、パレスチナの人々とともにある、という明確なメッセージを送った」として、この決議が「中東の和平とパレスチナ独立国家の樹立に向けた、外交の世界における大きな前進だ」と述べる。
 インドネシアも賛成に回った。社説は、「インドネシアは国連総会でこの問題をとりあげ、他の国々と共にイスラエルと米国に対して圧力をかけるべきだ」として、インドネシアが今後さらに関与を強めることを求めた。
 社説によると、イスラエルの攻撃によって死亡したパレスチナ人は4万人以上に上る。「占領と戦争を終わらせるために、インドネシアはイスラエルとパレスチナに対して二国家間の交渉を再開するように働きかけるべきである」と、社説は結んでいる。

 しかし、こうした世界の声とは裏腹に、イスラエルはその戦火をますます広げている。9月23日、イスラエル軍はレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを標的にしたとみられる空爆を開始。わずか一日で492人が死亡、1,645人が負傷し、子どもを含む多数の民間人も犠牲となった。

「ビビの計算」は世界に破滅をもたらすか
 インドの英字メディア、タイムズオブインディアは9月24日付で「ビビの計算」と題した社説を掲載した。「ビビ」とは、イスラエルのネタニヤフ首相の愛称だ。
 社説によると、今回のイスラエルによるレバノン攻撃の犠牲者は、1975年から1990年まで15年続いた内戦以来、一日の死者数としては最多だという。社説はしかし、レバノン側にも責任があると主張する。「ヒズボラは、数カ月にわたってイスラエルを挑発してきた。また、ベイルートは過激派グループを抑え込む努力をほとんどしてこなかった」と、社説は指摘する。
 また社説は、こうした大規模な攻撃に踏み切ったネタニヤフ首相の「計算」について次のように推測する。まず、イスラエルによるガザ地区への攻撃に頭を悩ませているアラブ諸国は、シーア派の武装組織に対する攻撃を「気にも留めないだろう」ということ。また、もしイランが介入することになれば、米国はイスラエル側に立たざるを得ないことから、「大統領選モード」の米国は、国際的な非難を浴びてもネタニヤフ首相を制御することはできないだろう、という2点だ。
 そのうえで社説は、「こうしたネタニヤフ首相の計算は、世界を巻き込んで破滅的な結果を招く恐れがある」と指摘する。

 一方、パキスタンの英字紙ドーンもまた、9月25日付の社説でインド紙と同様の見方を示した。社説は、レバノンでの戦闘がエスカレートする兆候を指摘。「イスラエルは、この地域全体を飲み込む火種を投じた。ガザ停戦への期待は日に日に薄れつつある。中東の未来は、あきらかに暗い」。

 インドネシア紙が「取るに足らない」と評した、強制力なき国連決議。そして、まさにその言葉を裏付けるようなネタニヤフ政権の行動。インド紙が指摘するように、「ビビの計算」は、世界を巻き込み、今まさに破滅へと向かっている。


(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2024/09/21/inconsequential-but-symbolic-un-resolution.html
インド:
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/bibis-calculations-2/
パキスタン:
https://www.dawn.com/news/1861025/war-on-lebanon

 

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