若者の心をつかんだトランプ次期米大統領に課せられた課題
パンデミックの打撃を受けて保守化が進む若年層をどう救済するか
- 2024/11/22
物質的かつ精神的な充足を持たせるために
今回の大統領選挙で共和党がホワイトハウスと上下両院で勝利したことにより、共和党に「民主党政権の失政で壊れた経済を立て直す役目」が与えられたことは明確だ。
しかし、いくらトランプ次期大統領が多くの若年層有権者の心をつかむことに成功したとはいえ、16〜24歳の失業率を9%台から大幅に引き下げ、「就職できる」「新車が買える」「家を持てる」「家庭が持てる」という中流生活への希望を若者に持たせるということは、「言うは易し行うは難し」である。
また、家族のあり方の多様性を強調する民主党政権下で伝統的な家族がおざなりにされ、多くの若い男性が人生の目的を見失ったとの指摘もあり、第2次トランプ政権が物質的な充足だけでなく、精神的な面でも若者を救済する政策を打ち出せるかが注目される。
しかし、若者を物質的・精神的に満足させるには、まず雇用者が米経済全般に明るい見通しを得て、新卒者採用に積極的に動かなければ不可能だ。現時点で若年層失業率が高止まりしているのは、米経済が表面的には堅調でありながら、経営者たちが将来の不透明さを警戒しているからにほかならない。
第2次トランプ政権は、経済政策として減税で国民の負担を軽くすることで消費を喚起し、エネルギー価格の引き下げでビジネスのコストを安くし、製造業を米国に呼び戻し、不法移民の追放によって住宅供給を相対的に増やして家賃や住宅ローンを手の届くレベルに押し下げることを掲げている。しかし、こうした一連の施策は、財政支出の増大や関税引き上げなど、本質においてインフレ的だという矛盾を抱えている。
トランプ政権の経済政策によって物価が上昇し、それを抑えようと米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げで対応すれば、かえって景気を冷やしてZ世代をはじめとする若年層が打撃を受ける可能性もある。第2次トランプ政権は若者を救済するために失敗は許されず、難しいかじ取りを迫られている。