貧困解決か脱炭素化か、前途多難な世銀改革
グローバルサウスのニーズと貸し倒れリスク、対中戦略のかじ取り迫られる次期総裁
- 2023/5/8
本来の目的に立ち返る時
保守派シンクタンクである米マンハッタン研究所のアリソン・シュレージャー上席研究員は4月14日、ブルームバーグ・オピニオンで「世界にはまだまだ貧困と財政上の不安定さが残っている。気候変動に世界規模で対処したいなら、世銀とIMFは本来の目的遂行のために従来の形で残したうえで、環境問題を解決するための国際機関を新たに創設すればよい」と論じた。
また、米下院金融サービス委員会の副委員長を務める共和党のフレンチ・ヒル下院議員も4月11日、Devex 上で「バンガ次期総裁は素晴らしい指導者だ。彼は今後、世銀の資金が中国のような有害な国に悪用されることを防ぎ、貧困対策とコアな開発の使命に集中すべきだ」と述べた。

バンガ次期総裁のレガシーは、自身の出身であるグローバルサウスの利益のためにどれだけ闘えるかで評価されるかもしれない。写真は南部・東部アフリカを担当する世界銀行のスタッフと話す現地の人々。(c) Abida Sidik Mia /twitter
世銀のIDAはコロナ禍で資金不足の崖に直面しており、低所得国の食糧や肥料輸入など本来の使命に沿った融資を優先すべきだという主張には、説得力がある。世銀の脱炭素化融資の強化を託されたバンガ次期総裁のレガシーは、自身の出身であるグローバルサウスの利益のためにどれだけ闘えるかにかかっているのかもしれない。