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中東を舞台に複雑化する米中のパワーバランス
「中国式現代化」の浸透により進む反米国際秩序の形成
- 2024/9/6
世界を二分する大戦の序章
もちろん、依然として中国による中東和平に実現の可能性を見ている論者も少なくない。
中東の政治経済アナリストであるスティーブン・ターナー氏がボイス・オブ・アメリカに語ったところによれば、中国がイランを擁護する本質は、経済的利益にあるという。同氏は、中国の狙いがイランの石油資源にあると同時に、市場としての魅力にもあると見ている。事実、中国にとってイランは電子部品や電信設備などハイテク製品の大口の輸出先国である。もちろん、イスラエルも中国にとって重要な貿易相手ではあるが、イランから得られる経済的な利益の大きさとは比べ物にならないことを踏まえると、イランとイスラエルの間で戦争が勃発することを中国は決して望んでいないはずだとターナー氏は言う。むしろ、イスラエルとイランの双方に経済的なつながりと強い影響力を有する中国が両国の緊張緩和を進めて国際社会から支持を得ることで、米国と対抗し得るパワーを持とうとしているというのだ。
イスラエル人コラムニストで元駐米イスラエル大使の経験もあるアロン・ピンカス氏が最近、メディアに発表した論評でも同じようなことが指摘されている。ピンカス氏によれば、中国は中東戦争のリスクを下げるために水面下でイランを牽制している可能性があるという。
これまで見て来た通り、中東情勢に対する中国の立ち位置については、ロシアとともにイランやハマス、ヒズボラなどを正当化し、反米機軸を形成して米国に対立していくのではないかという見方と、イランをはじめ、いわゆる「混沌の枢軸」を制御することで和平を維持していくのではないかという、相反する見方がある。
和平が実現するにせよ、戦争が勃発するにせよ、この中東危機の向こうには、イランをはじめイスラム系のテロ組織を懐に取り込み、米国をはじめ、民主主義を掲げる国々とは異なる秩序と正義を軸にした国際社会を構築したいという中国の野望がある。事実、中国は7月に開催した三中全会(第三回中央委員会全体会議)で「中国式現代化」に関する決議を採択し、権威主義や独裁国家の発展モデルとして途上国に強く打ち出した。
世界には宗教権威主義を掲げる国や、部族秩序に基づく独裁国家がいまだ数多く存在する。そうした国々が中国に憧れ、中国を中心とする反米国際秩序を形成していくとしたら、その流れは最終的に世界を二分する大戦の序章へとつながっていくだろう。