パンデミックの先に 終わりなき感染症と闘うアジア
今年も各国で広がる流行 封じ込めのカギを握る医療と情報へのアクセス改善

  • 2025/7/29

 新型コロナウイルスによるパンデミックという危機を経て、日常を取り戻したかに見える世界だが、感染症との闘いは今も終わっていない。

(c) Mufid Majnun / Unsplash/

知られざる「チクングニア熱」

 バングラデシュでは現在、新型コロナウィルスの感染が再拡大しているうえ、デング熱の流行も始まっているが、それに加えて、デング熱と同じように蚊が媒介する「チクングニア熱」の流行も加わっているという。同国の英字紙デイリースターは、6月15日付で「私たちが直面する健康危機の三重苦」と題した社説を掲載した。

 社説によると、チクングニア熱は現在、首都ダッカを中心に都市部で広がりを見せている。チクングニア熱の流行は、医療システムの負担を増大させるのはもちろんだが、症状がデング熱とよく似ているため、診断や治療が遅れたり、そのプロセスが複雑化したりする可能性もあるという。また、チクングニア熱については、全国的な監視システムが整っていないため、実際の感染者数はもっと多いと考えられている。

 社説は、新型コロナとデング熱だけでなく、チクングニア熱についても、症状や予防についての情報提供を強化するべきだ、と指摘している。

ポリオワクチン わずかな接種漏れが次の感染を生む

 地球上でポリオが根絶されていない国は、わずか2カ国となった。そのうちの一つ、パキスタンでは、「ポリオ患者は99%以上減少した」と保健省が発表しているが、実は、今年だけで12例の感染が確認されている。6月23日付の同国の英字紙ドーンは社説でこの問題をとりあげた。

 社説によると12例のうち6例は、ハイバル・パクトゥンクワ(KP)州で発生しており、同州が特に深刻な状況にあるという。1994年にポリオキャンペーンが始まった時には、年間2万例もの感染が報告されていたことを考えると、「患者数が2ケタ台まで減少したのは、数十年にわたる努力の結果」だと、社説は一定の評価をしたうえで、「根絶」ではない、と念を押す。

 社説は、KP州でポリオが根絶されない理由について、医療アクセスの困難さや、地元住民の抵抗、女性接種員の不足などを挙げる。また、こうした理由により、ワクチン接種活動を妨げられた結果、数千人の子どもが接種の機会を逃している、とも指摘する。

 社説は、「わずかな地域での接種漏れが、ウイルスを存続させ、それが感染拡大の源となる。すべての子どもが接種を受けられるようにする必要がある」と主張し、「パキスタンはポリオ根絶に近づいているが、最後のステップが最も困難だ」と述べている。

拡大が止まらない若年層のHIV感染

 フィリピンで続くのはHIV感染との闘いだ。フィリピンの英字紙デイリーインクワイアラーは、6月8日付の社説で、フィリピン国内でHIV感染者が急増している問題についてとりあげた。

 社説によると、フィリピンの保健省は、急増するHIV感染者について、「国家公衆衛生緊急事態」を宣言するようマルコス大統領に要請したという。社会全体でHIVに対する危機感を高め、あらゆるセクターが協力して対応にあたるためだ。保健省によると、今年1月から3月までの間に、5,101人の感染者が確認されたという。1日あたり平均57件の新規感染者が報告されたことになる。

 また、近年の特徴として「新規感染者の若年化」がみられるという。保健省によると、新規感染者を年代別に見た場合、2002年から2005年までは35歳から49歳が最多だったが、2006年以降は25歳から34歳が最も多くなっているという。今年の新規感染者の中には、12歳の少年もいたという。また、感染経路としては、これまでも性行為が中心だったが、近年は男性間性行為の割合が高くなりつつあるという。

 社説は、感染者の若年化への対応として、学校における性教育の強化や、避妊具、抗レトロウイルス薬へのアクセスの改善などが必要だと訴えている。

(原文)

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/are-we-looking-triple-health-crisis-3921081

パキスタン:

https://www.dawn.com/news/1919271/finishing-the-job

フィリピン:

https://opinion.inquirer.net/183767/national-emergency-over-hiv

 

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