トランプ政権は世界の戦争を終わらせるのか 問われる米国の軍事支援
ウクライナのみならずイスラエルに対する武器輸出の停止を求める声があいつぐ
- 2024/12/13
アメリカ大統領選を制し、ホワイトハウスへの復帰を決めたドナルド・トランプ氏。二期目となる政権で、国内外の諸課題に対してどのような政策を打ち出すのか、世界の注目が集まっている。なかでも、ウクライナやパレスチナ自治区での殺戮を止められるのか、今後の行方を各紙が論じている。
トランプ氏が操縦する「ジェットコースター」
インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポストは、11月7日付で「アメリカの選択」と題した社説を掲載した。
同紙は、共和党が大統領職と上下両院の主導権という米国政府の三権を独占したことについて、「共和党が手にしたこの強固な基盤は、第二次世界大戦後、一握りの米国大統領のみが享受してきた優位性だ」と、その特殊さを強調。一方の民主党については、「ハリス氏を歓迎した女性やマイノリティグループの熱狂は、ハリス氏を勝利に導くほどの勢いにはつながらなかった」と指摘した。社説はまた、ハリス氏の敗因について、「ガザ問題や、彼女がキャンペーンの焦点をあてていた生殖に関する権利の議論によって、彼女の戦略が複雑で分かりづらいものになったうえ、有権者たちは、インフレや生活費の高騰、移民問題を、より重視したようだ」と、分析した。
また、第二次トランプ政権の外交について、社説は「世界は再び不安定な政治家が舵を握るジェットコースターに乗ったようなものだ」との見方を示した。特に、ロシアの侵攻に抵抗して戦闘を続けるウクライナへの支援を取りやめる可能性があることについて、「多くの懸念が寄せられている」と指摘した。また、ガザ地区については「トランプ氏はイスラエルの強力な支持者である一方、ガザ地区での戦争を終わらせるとミシガン州の有権者に明言した公約を実行する可能性もある」と述べている。
戦争を止めるには武器供給を止めよ
インドの英字メディア、タイムズ・オプ・インディアも、11月17日付の社説でこの問題を論じた。
社説は、「戦争を止めるには武器供給を止めよ。トランプ氏はこの原則をウクライナについては理解しているが、ガザについては理解しない」と述べた。
社説は、「ウクライナでの戦闘が開始して10月で1,000日が経過した」としたうえで、「にもかかわらず、この戦争を終わらせようという議論が欠けている」と指摘する。そのうえで、「トランプ氏の大統領就任が、この降着状態に一石を投じるだろう」と予測した。社説によれば、すでに徹底抗戦を主張してきたウクライナのゼレンスキー大統領の姿勢が変化しつつあり、外交による戦争終結を模索する動きが広がっているという。
また社説は、「ロシアとウクライナ双方に対する武器供給がこの問題を長引かせている」と述べ、ウクライナを支援している欧米諸国と、ロシアを支援している中国・イラン・北朝鮮の双方に責任がある、と主張する。
そのうえで、「トランプ氏の誤り」として、この武器供給の停止をガザ地区に対して適用していないことを挙げ、こう述べた。
「トランプ氏がイスラエルに白紙の小切手を渡し、軍事作戦を全面的に支援する限り、この紛争は終わらない。もしも彼が本当に“戦争を終わらせる人物”という評価を得たいのなら、ウクライナとガザ地区の双方に対して同じ論理を適用しなければならない」
中東で問われるトランプ氏の真価
パキスタンの英字紙ドーンも、11月7日の社説「トランプ2.0」で、新政権の対応を、ウクライナとガザ地区に着目して論じた。
社説は、「トランプ氏の真価が問われるのは、ウクライナと中東における戦争を終結させられるかどうかだ」と断言。そのうえで、ウクライナについて「トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領を“セールスマン”と呼び、ウクライナに対する米ドルが間もなく枯渇する可能性を示した」として、アメリカが支援を引き上げる姿勢を見せたと述べた。
その一方で、イスラエルについては「トランプ氏がアラブ系米国人の有権者に対して約束した“中東に平和をもたらす”という公約と、あからさまな親イスラエルの偏見との間で、彼がどのように折り合いをつけていくのか、まだ分からない」と述べ、先行き不透明な状況に対する懸念を示した。
(原文)
- インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2024/11/07/americas-choice.html
- インド:
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/not-in-my-arms/
- パキスタン:
https://www.dawn.com/news/1870646/trump-20