インドネシアがBRICSに正式加盟 拡大続けるグローバルサウス
国際秩序の変化を危ぶみ慎重な外交を求める声も

  • 2025/3/3

 インドネシアが2025年1月1日、BRICSに正式加盟した。BRICSとは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなどで構成される新興国のグループで、「米ドル以外での貿易決済」、いわゆる「脱ドル」を目指すなど、アメリカへの対抗軸と認識されつつある枠組みである。インドネシア以外にも加盟を目指す国が相次いでおり、国際社会の注目が集まっている。

2024年10月22~24日、ロシア西部のカザンでBRICS第16回首脳会議が開催された。 最後列の右から2番目が、インドネシアのスギオノ外相 © President.az / Wikimedia Commons

米中対立に巻き込まれるリスクを懸念

 インドネシアの英字紙ジャカルタポストは2025年1月9日、「BRICSの火遊び」と題した社説を掲載した。

 社説はまず、インドネシアがBRICSに正式に加盟したことについて、「インドネシアを世界レベルで影響力のある国にする、というプラボウォ大統領の野望の実現に一歩近づいた」と述べた。社説は、インドネシアが現在、世界で16番目の経済大国であると同時に、世界で4番目に多くの人口を擁していることに触れ、「国際社会において、われわれの声は尊重されるべきだ」と主張する。

 とはいえ、社説は今回の加盟を手放しで喝采しているわけではない。「新興国グループに参加することで、確かにインドネシアの影響力は高まるだろう。だが、中国と米国の間で貿易や軍事面の緊張が高まっている今、BRICS加盟がどう影響するか認識しておくべきだ」と指摘する。つまり、米中対立や世界のブロック化に巻き込まれることに注意せよ、と注意を促しているのだ。実際、トランプ米大統領は、「BRICSが脱ドル化に踏み切るなら、100%の関税をかける」と発言している。

 インドネシアは、BRICSへの加盟に加え、西側諸国を中心とした経済協力開発機構(OECD)への加盟に向けたプロセスも開始しており、日本の石破首相は「後押しする」と約束している。社説は、「世界的な権力争いによる複雑な力学の中でインドネシアの立場が不安定になったり、国益を損なったりすることがないように留意すべきだ」と訴える。

 「インドネシアはBRICSやその他の多国間組織から利益を得ることを目指すのみならず、あらゆる結果に備える必要性も忘れてはならない。インドネシアには古くから『火遊びをすればやけどをし、水遊びをすれば濡れる』ということわざがある」

 社説はこう述べたうえで、「あらゆる可能性を視野に入れつつ、注意深く外交を展開せよ」と主張している。

アジアの二大大国を結ぶBRICS

 BRICSの創設メンバーで、グローバルサウスの中心的存在ともいわれるのがインドだ。そのインドでは、英字紙ヒンドゥーが2025年1月27日付で「インドとインドネシア:古代の絆から新たなステージへ」と題した社説を掲載した。インドネシアのプラボウォ大統領が1月24日から26日までインドを訪問した直後の記事だ。

 社説はまず、インドとインドネシアの関係について「かつて非同盟運動を共に立ち上げた国同士であり、「大国政治に対する嫌悪感によって結ばれている」と表現。さらに、多数派の宗教が少数派に対して寛容であることや、経済大国であるといった共通点も挙げている。

 また社説は、「ウクライナ戦争が勃発した後の欧米諸国の制裁や米中対立、インド太平洋における中国の進出、多国間秩序の弱体化などに対する懸念を共有していることも、両国の結び付きを強めている」と指摘。インドネシアがBRICSに加わったことについて、「アジアの二大大国が、共通の懸念事項をめぐって第三の軸とも言えるグローバルサウスの国々のコンセンサス形成に努めることになるだろう」と歓迎している。

 

(原文)

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2025/01/09/playing-with-brics-fire.html

インド:

https://www.thehindu.com/opinion/editorial/india-with-indonesia-on-ancient-ties-to-a-new-phase/article69143714.ece

 

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