二大大国のスーパーパワーの限界が露呈 多極化の時代の始まりか
米中首脳会談をアジアはどう報じたか

  • 2026/6/22

 5月半ばに行われたアメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席による会談は、目立った成果はないものの、米中両国が対立よりも互いの国益を守るという点で融和を図ったものとなった。火種を秘めたままのパワーバランスのなか、他のアジア諸国は何を思っているのだろうか。

中国の習近平国家主席と握手を交わすインドのモディ首相(左)(2025年8月31日撮影)(c) Prime Minister’s Office (GODL-India)

東南アジアに学び、中国からの直接投資を増やせ

 インドの英字紙タイムズオブインディアは、日本・アメリカ・オーストラリア・インドの4カ国の枠組み「クアッド」の外相会合が5月26日に開かれたことを受けて、翌27日付の社説で「クアッドの陰と陽」と題した記事を掲載した。

 社説は冒頭、アメリカのルーズベルト元大統領が語った「穏やかに語り、大きな棒を携えよ」という言葉を引用し、「今回のクアッドはこの精神を体現っするものだった」と評価した。重要鉱物やエネルギーの安全保障、海上監視の取り組みなどで新たな協力策が打ち出され、実りのあるものだったと振り返る。

 そのうえで、会合の背景にある最大の存在であると中国との関係についても論考する。社説は、中国が早速、クアッドについて「排他的な仲間内のグループだ」と批判したことを伝えたうえで、インド側が「特定の第三国をも標的としたものではない」と明言していることについて、「賢明な立場」だと評価する。

 インドにとって、中国との関係は高度な難しさを伴う。歴史的な領土問題や経済的な相互依存関係、地域の戦略的課題という複数の要素が絡み合っているからだ。だからこそインドには、冒頭の「穏やかに話し、大きな棍棒を携える」独自の戦略が必要だと社説は言う。経済的な誘因と国家安全保障上の防護策を巧みに組み合わせ、絶妙なバランスをとる姿勢だ。つまり、安全保障上は厳しい姿勢を保ちながらも、中国からの外国直接投資を加速させることを目指せ、ということだ。

 社説によると、2000年4月から2025年12月までの中国からインドへの直接投資額は25億ドルにとどまっている。これについて社説は、「中国企業が投資を渋っているためではなく、インド側に十分な魅力がないからだ」との見方を示す。不十分なインフラ、煩雑な官僚手続き、契約履行の不徹底といった予測しづらいビジネス環境がネックになっていると社説は指摘する。戦略的に重要ではない分野で中国からの大規模なFDI流入が実現しなければ、中国は今後もインドを地域戦略上の競争相手として見る可能性が高い。その場合、両国の利害はしばしば対立することになる。

 しかし、中国からの投資が増えれば、北京はインドに「ウィンウィン」のパートナーシップを求めざるを得なくなる。社説は、「高い経済成長を実現できなければ中国の覇権的な傾向を抑制するという意味で、わが国はインド太平洋地域でこれ以上大きな役割を果たすことはできない」と述べ、「インドは東南アジア諸国から学ぶべきだ」と訴える。

 「中国からASEAN諸国への直接投資額は、2010年には40億ドルに満たなかったが、2023年には170億ドルへと急増した。南シナ海問題で中国に強硬な姿勢を取っているフィリピンでさえ、インフラ事業では中国からの投資を厳選して受け入れている。今こそインドも中国との経済関係を強化し、一段ギアを上げるべき時だ」

「期待外れ」の首脳会談と二極化の終焉

 一方、「中堅国はリーダーシップの空白に介入すべきだ」と主張したのは、インドネシアの英字紙ジャカルタポストだ。米中会談後の5月17日付で、「なんと低調な首脳会談だったことか」と題した社説を掲載した。

 経済面でも軍事面でも世界で最も大きな影響力を持つ二つの国の指導者が会談するとなれば、当然ながら期待は高まる。多くの人々は、中東で続く紛争や、ホルムズ海峡を通る原油輸送の混乱による世界経済へのリスク、さらには中国だけでなく多くの国々との間で続く米国の貿易摩擦など、喫緊の国際課題について、前向きな進展があることを期待していた。しかし、成果は遠く及ばなかった。社説は会談を「期待外れ」と表現した。「2日間の会談を経ても、世界はより安全になったわけでもなければ、世界経済がより健全になったようにも見えない。トランプ大統領と習近平国家主席は、詳細について口を閉ざしたままだった」

 さらに、両首脳について「超大国の指導者としてはまったくふさわしくない。真のリーダーシップの試練に失敗した」と表現。「彼らはせっかくの重要な機会を無駄にしたが、今となってはわれわれは両者の力量を十分に理解しているだけに、過度な期待をすべきではなかったかもしれない」と、厳しく批判した。

 そのうえで社説は、「両首脳の発言には、一貫性を欠く部分や、相互に矛盾しているように見える部分もあった」と指摘。今回の首脳会談が「失敗」したことについて、「単に両首脳の指導力が欠如していただけでなく、両国の力にも限界があることを示している」と続ける。そして、たとえ中国とアメリカがそれを望んだとしても、世界はこれら二つの大国によって管理できるものではなく、二極化が今後の道ではない」と断言する。

 「インドネシアをはじめとする中堅国が、拡大しつつある世界のリーダーシップの空白を埋める役割を果たさなければならない」「中堅国は、より均衡のとれた、真に多極的な世界を推進するために、より積極的に取り組まなければならない」と、社説は訴えている。

二極化から多極化の時代へと変わっていくのだろうか。それが、「多極的な対立」の時代ではないことを真に願う。

 

(原文)

インド:

https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-edit-page/yin-yang-of-quad/

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2026/05/18/what-an-anticlimax-summit.html?utm_source=(direct)&utm_medium=channel_editorial

 

 

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