混迷続くミャンマー情勢、足並み揃わぬASEANに不満の声
民主派不在の協議に、欠席の多い外相会合 ぐらつくASEANへの信頼
- 2025/2/3
ミャンマーでは2021年2月に国軍がクーデターを起こし、政権を掌握した。以後、民主化勢力や少数民族武装勢力と国軍との間では武力衝突が続いており、政情は今も安定していない。ミャンマーも加盟している東南アジア諸国連合(ASEAN)は、クーデター当初より対立する関係者に、「対話による解決」を求めているが、国軍は応じず、事態は悪化している。
タイ政府は2024年12月半ば、ミャンマー情勢をめぐる二つの国際会議を主催した。一つは12月19日に開かれた、ミャンマーとその近隣諸国、中国、インド、バングラデシュ、ラオス、タイによる非公式協議だ。出席したミャンマー国軍政府の外相は、国軍が2025年に計画している選挙について説明したという。もう一つの会議は、ASEAN加盟国による外相会合だが、閣僚レベルの代表を派遣したのは、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5カ国のみだった。域内大国であるインドネシアの外相は欠席し、代理が出席した。
軍政側のみを招いた会合に「あり得ない」の声
タイの英字紙バンコクポストは2024年12月19日付で、オピニオン記事「ミャンマー危機でASEANの足並みが乱れる」を掲載した。筆者は国際NGOヒューマンライツウォッチのリサーチャー、シェイナ・バウチャー氏だ。
バウチャー氏は記事の中で、タイ政府主催の会議が、国軍と対立するミャンマーの民主派勢力(国民統一政府)の代表者を招かなかったことについて、強く批判した。「ASEANは『ミャンマー主導による平和的かつ持続可能な解決策』を追求するため、すべての当事者による建設的な対話を約束している。それにもかかわらず、民主派勢力が発足させた国民統一政府の代表が招待を受けたという報告はない。ミャンマーにおける人権状況の悪化に対して、軍事政権高官とのみ公式な協議を行うなどということは、あり得ない対応だ」。
そして、「ASEANのミャンマーに対するアプローチを全面的に見直す必要がある。軍事政権側に傾倒することは、まさに誤った方向であり、ASEANの信頼性をさらに損なう」と主張した。
「ミャンマー軍政のASEAN会議への参加を禁じよ」
一方、ASEAN外相会議にスギオノ外相が欠席したインドネシア。ジャカルタポストは2024年12月19日付で「ASEANを見捨てるのか?」と題した社説を掲載している。
社説は、外相の「欠席」という手段でASEANにメッセージを送ったインドネシアの態度について、疑問を呈している。特に、タイ政府主催の会議にミャンマー国軍が参加したことについて、「インドネシアはミャンマー軍事政権の代表団の出席に反対する立場を明確にすべき」であり、「それを示すために外相自身が出席するべきだ」と強く主張している。
「ミャンマーの軍事政権が、国内に平和と民主主義をとり戻すという約束を果たしたことを証明するまで、いかなる公式ASEAN会議にも同政権の出席を禁じるように強く求める。インドネシアは、残忍なミャンマー軍事政権を容認し始めた時、自国の基本原則を裏切ることになる」
止まらぬロヒンギャの難民化
ASEAN内の足並みがそろわず、ミャンマー情勢の打開策が見えない中、バングラデシュはミャンマー国境で高まる危機に警戒感を強めている。バングラデシュの英字紙デイリースターは2024年12月23日付で、この問題についての社説を掲載した。
バングラデシュが危機感を強めているのは、ミャンマー西部の国境地帯で続く紛争により、ミャンマー国内の少数派イスラム教徒ロヒンギャが迫害され、バングラデシュへ難民として逃れてきているからだ。
社説によればバングラデシュは、過去7年間で少なくとも120万人のロヒンギャの人々を受け入れた。バングラデシュ政府はすでに、新たな受け入れを止める方針を決定しているが、それでも非公式ルートを通じて6万人以上の人々が同国内に逃れてきているという。
社説は、「バングラデシュはいつまで彼らに避難場所を提供し続けられるだろうか。彼らの受け入れのために、バングラデシュが負担する経済的、環境的、社会的負担は日に日に持続不可能なものになりつつある」と指摘。バングラデシュ政府に対し、「地域の安定を取り戻すため、ミャンマー国軍やさまざまな武装勢力に、対話による平和的解決を促すべきだ」と求めている。
(原文)
タイ:
https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2922642/asean-falters-on-myanmar-crisis
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2024/12/19/are-we-abandoning-asean.html
バングラデシュ: