英国のコンテナ事件に見るベトナム人の「見果てぬ夢」
「密入国のリスクおして活路求める価値観とは」

  • 2019/11/30

”海外で稼ぐ!” 過剰な憧れと期待が判断を狂わせる

 「海外に行けばなんとかなる」という発想は、(先進国の頭で考える限り)短絡的だと思えるかもしれない。しかし、実際、筆者が20年ほど前にベトナムで暮らし始めた当初は、しばしば聞くセリフだった。

 最も極端な例を2つ紹介しよう。

 当時、知り合いから「頼みがある」と呼び出されて出向くと、同席していた50代ぐらいの女性から、「甥が日本で働きたいと言っている。書類上でいいから結婚してくれないか」と、偽装結婚を持ちかけられた。未婚かつ適齢期(当時)のお嬢さんだった筆者は、怒りを通り越して、悲しいやら情けないやらで、全身の力が抜けそうになった。毛頭、承諾する気はなかったが、偽装結婚の事情を知りたいと思い、条件を聞いてみると、謝礼は年50万円だったろうか。3年が過ぎたら”離婚”していいとも言われた。配偶者が外国人でもビザなしで就労ができるため、婚姻期間に足がかりを作り、あとはドロン、といった企みであることが伺われた。

 彼女によると、アメリカの場合、自国民の配偶者であっても就労ビザの要件は厳しいが、日本は”簡単”だという。誰に吹き込まれたか知らないが、筆者も日本も舐められたものである。試しに、道徳的にも法的にも反する行為だとたしなめてみたが、どこ吹く風だった。

ホーチミン市内のアメリカ総領事館前。ビザ取得のインタビューを待つ人たち。アメリカは、人気ナンバーワンの渡航先であり、夢の移住先でもある(筆者撮影)

 もう一つの例は、市内のホテルでベルボーイをしていた友人男性に起こった話だ。日本人も多く宿泊するホテルで、その中の一人から「静岡県内のゴルフ場で働かないか」と持ちかけられたため、先方に会ってほしいと筆者に頼んできた。友人の話を聞いても、給与や保証面があいまいに感じられたため、その日本人に会ってみたところ、名乗りもしなければ、名刺も出てこない。即刻辞めるよう友人に伝えたが、まったく聞く耳を持たず、「毎日カップラーメンを食べてでも耐えてみせる」と言い、日本へ行ってしまった。彼の消息は分からないが、息災であることを祈るばかりである。

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