『月刊ドットワールドTV』#4 東京と旭川、カンボジアを結んでライブ配信
「芸術は決して屈しない」――詩作を禁じられたアフガニスタンの女性詩人と広がる連帯

  • 2024/12/26

 ドットワールドとインターネット上のニュースサイト「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロスメディア番組『月刊ドットワールドTV』が4回目のライブ配信を行いました。今回は、ナビゲーターを務めるドットワールド編集長の玉懸光枝が、滞在先のカンボジア・プノンペンからオンラインで東京の8bitNewsスタジオとつなぎ、構二葵さんとともに伝えました。

広がる連帯と、日本の詩壇の変化

 4回目となる番組は、「芸術と自由の沈黙に抗うアフガン女性詩人と広がる連帯」と題し、2024年12月25日の日本時間21時から8bitNews上で配信されました。

 冒頭では、玉懸が滞在中のプノンペンで撮影した街並みの遠景をはじめ、中国系の店舗が並ぶ一角、ライトアップされた王宮前で夕涼みする市民の様子などを撮影した映像を紹介しました。

 続いて、ゲストトーク「ドットワールドCross」では、北海道・旭川市在住の詩人、柴田望さんをゲストに招き、玉懸が執筆した記事「「芸術と自由の沈黙に抗い続ける」アフガニスタンの女性詩人」をもとに対談しました。

 2021年8月にイスラム原理主義勢力タリバンが20年ぶりに復権したアフガニスタンでは、表現者や女性への抑圧が一層強まっています。女性は教育を受けることも就業も許されず、服装や移動の自由すら奪われているうえ、2023年1月には現地の人々にとって生活の一部である詩の創作や、人前での吟唱も禁じられました。強まる一方の抑圧に抵抗し、抗議の詩を送ってほしいと世界の詩人に呼びかけたアフガニスタン出身の詩人、ソマイア・ラミシュさんに応えて日本の詩人たちに連帯を呼びかけたのが、柴田さんです。

 柴田さんはまず、日本でもかつて自由な創作活動が禁じられた時代があったことや、旭川がかつて小熊秀雄をはじめ、さまざまな詩人を輩出した地であることに触れながら、「表現の自由を求めるソマイアさんの訴えを、同じ詩人として見過ごせなかった」と語りました。

 続いて柴田さんは、日本各地の詩人や、さまざまな賛同者の協力を得て、世界に先駆け2023年8月に出版した詩集『詩の檻はない―アフガニスタンにおける検閲と芸術の弾圧に対する詩的抗議—』(デザインエッグ)と、2024年11月に新たに出版した『ソマイア・ラミシュ詩集 私の血管を貫きめぐる、地政学という狂気 madness of geography in my veins』(デザインエッグ社)の背景について紹介しました。また、ソマイアさんとの連帯や、詩集の出版を通じて日本の詩壇に起きつつある変化の兆しについても語りました。

鉄道国際見本市では「破壊」を展示 右傾化が進むドイツの記事も

 続いて、その他の新着記事を紹介する「ドットワールドUPDATE」では、「社会を読み解く」と「報道を読む」から、記事を2本ずつ紹介しました。

 このうち、「社会を読み解く」でまず取り上げたのは、ドイツで2年に1度開催される鉄道の国際見本市「イノトランス」を取材している土方楊さんが執筆した「ベルリンで体験した世界の鉄道の「破壊と創造」」です。AIや環境関連など、各国が誇る最新技術が展示されている会場の一角に、ロシアによる砲撃の様子を生々しく伝えるウクライナ鉄道のブースが設けられていた様子を伝えています。

 また、2024年12月16日にオラフ・ショルツ首相の信任投票が否決され、約20年ぶりに任期中の議会の解散が決まったドイツで強まる右傾化の流れや、2025年2月に行われる解散総選挙の行方について、現地在住の駒林歩美さんが解説した「政治の混乱と経済危機で強まるドイツの右傾化」も取り上げました。同記事では、政治の混乱と経済危機のなか保守政党の台頭が進んでいる様子をはじめ、2024年12月7日に起きたシリア・アサド政権の崩壊がドイツ社会に与える影響、難民や移民問題の再燃などについて解説しています。

 一方、「報道を読む」からは、「トランプ政権は世界の戦争を終わらせるのか 問われる米国の軍事支援」と「イスラエルとレバノンの停戦合意はネタニヤフの勝利か」の2本を取り上げました。前者では、2023年11月に実施された米大統領選におけるトランプ候補の再選が世界の戦争に与える影響を論じるインドネシア、インド、パキスタンの社説を、後者ではイスラエルがレバノンとの停戦に合意した背景や意図について論じるインドとパキスタンの社説を紹介しています。アジアの各紙も国際情勢、特に中東情勢に高い関心を寄せていることが伝わってきます。

            *

 2019年7月にスタートしたドットワールドは、この夏、創刊5周年を迎えました。これまでのご愛読と応援に心から感謝いたします。節目のタイミングでご縁をいただいた8bitNewsとのクロスメディア番組『ドットワールドTV』を通じて、一層多くの方々に記事をお届けできれば嬉しいです。ぜひご視聴ください。

 ドットワールドはこれからも世界の人々から見た世界の姿や彼らが大切にしているもの、各国の報道ぶりや現地の価値観を喜怒哀楽とともに伝えることで、多様な価値観を理解し、違いを受容し合える平和で寛容な一つの世界を築く一助となることを目指します。引き続きどうぞ宜しくお願いします。

 

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