ミャンマーの人々は反クーデターを共に戦ってくれる企業や政府を求めている
消費者や投資家から厳しい目が注がれる軍との距離感

  • 2021/3/26

日本から離れていく人々の心

 ミャンマーの人々は企業の動きも監視しており、軍に協力する企業をソーシャルメディア上で知らしめ、不買運動を呼びかける。

 例えば、ミャンマーでポカリスエットを展開する大塚製薬は、たまたまクーデター直後架け替えることになったポスターにもともと協力していた保健・スポーツ省のロゴが入っていたことで、市民から軍との関係を疑われることになった。大塚製薬側が疑惑を否定し、看板を下ろしたことで事なきを得たが、消費者の目はかように厳しい。

 しかも、ここにきて、日本政府や企業の消極的な姿勢がミャンマーの人々の間で落胆を呼んでいる。

 1990年代に来日して日本で働き、民政移管後にミャンマーに戻って日本企業とビジネスをしてきたミャンマー人ビジネスマンはこう言う。

 「今、ミャンマーには正義か不正義、どちらかしかなく、中立というのは、すなわち不正義に賛同していることになります。嘘にまみれた汚い軍に嫌われないよう軍を批判しないなら、ミャンマー国民に嫌われてもいいということになります」

 一方、韓国の国内では、ミャンマーのクーデターに反対する抗議運動が活発に行われており、ミャンマー人たちの励みになっているという。

 「これにより、ミャンマー国民の心は間違いなく韓国に奪われました。日本や日系企業への感情が、今後、冷え切っていくかどうかは、日本政府の行動次第です」

市民から徹底的に否定される国軍総司令官 (c) YN

 何十年も独裁下にあり、民政移管後も経済が発展途上だったミャンマーには、外国からの健全な投資が必要だ。2005年時点で50%近かった貧困ライン以下で暮らす人口の割合が2017年には25%以下にまで下がった背景には、経済の自由化と外国投資の急増があった。その後、昨年の新型コロナのパンデミックによって経済が打撃を受け、1日2ドル以下で暮らす人々の割合が、10月には63%に達した。今回のクーデターによる経済混乱から貧困層は増える一方だ。

 進出企業にも、従業員の安全と雇用を守りつつ操業を続けるためには、軍を批判しにくいとう事情があるのだろう。しかし、そうした立場をとり続けると、消費者であり、働き手でもあるミャンマー国民の心が離れてしまう。難しい判断だが、ミャンマー国民や海外投資家の目は厳しそうだ。

 

固定ページ:
1

2

関連記事

ランキング

  1. (c) 米屋こうじ バングラデシュの首都ダッカ郊外の街で迷い込んだ市場の風景。明るいライトで照…
  2. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  3.  ミャンマーで2021年2月にクーデターが発生して丸3年が経過しました。今も全土で数多くの戦闘が行わ…
  4.  2024年1月13日に行われた台湾総統選では、与党民進党の頼清徳候補(現副総統)が得票率40%で当…
  5.  台湾で2024年1月13日に総統選挙が行われ、親米派である蔡英文路線の継承を掲げる頼清徳氏(民進党…

ピックアップ記事

  1. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  2. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  3.  フィリピン中部、ボホール島。自然豊かなリゾート地として注目を集めるこの島に、『バビタの家』という看…
ページ上部へ戻る