「ゴキブリ人民党」に集う若者たち インド政府に突きつけた不満
失業、物価高、試験への不信──インド2紙とパキスタン紙が問う「若者の声」

  • 2026/8/14

 今年5月、インターネット上に突如現れた「ゴキブリ人民党(CJP)」。インドの与党「インド人民党(BJP)」をもじって作られた架空の政党だが、若者を中心に急速に支持を広げ、その動きは現実の抗議活動にもつながった。

 きっかけは、失業中の若者を「ゴキブリのような存在」と表現したインド最高裁長官の発言だった。しかし、そこに集まった怒りは、一つの発言への反発だけではない。失業や賃金の停滞、物価高、国家試験をめぐる不祥事など、若い世代が抱えてきた不満が噴き出している。

 7月20日には大規模な抗議行動が行われ、警察との衝突に発展した。この事態を、インドの主要紙二紙と、隣国パキスタンのメディアはどう見たのか。三紙に共通していたのは、政府が若者の怒りを一過性のものとして片付けず、その背景にある声に耳を傾けるべきだという指摘だった。

若者が集った「ゴキブリ人民党」のロゴ (c) Salim Bin Yousuf / wikimediacommons

「ゴキブリ」が映し出した若者の怒り

 「ゴキブリ人民党(CJP)」は、アメリカ在住のインド人男性が風刺としてネット上で立ち上げた架空の政党だ。ホームページに掲げられた「入党条件」は「無職であること」「怠惰であること」など、若者を「ゴキブリ」にたとえた発言を逆手に取った皮肉に満ちている。

 当初はネット上の風刺だったが、若者たちの共感を急速に集めた。その怒りは長官発言だけにとどまらず、国家試験の問題漏洩など、政府や制度への不信にも広がっていった。

 7月20日の大規模な抗議行動は、こうした一連の流れの中で起きた。

 インドの英字メディア、タイムズオブインディアは、7月22日付の社説「Let Truth Prevail(真実を明らかにせよ)」で、「警察による過剰な武力行使がなかったか、調査委員会を設置すべきだ」と主張した。

 社説は、衝突の背景には「双方の誤算」があったと見る。抗議参加者は、向かっていた先の議会周辺が「最高レベルの警備区域」であることを十分に認識していなかった。一方、警察側も、「ゴキブリ・キャンペーン」が若者たちを動かす力を「大きく過小評価していた」。その結果、本来なら避けられたはずの衝突が起きたという。

 SNS上には、警官から暴力を受ける参加者の映像も出回っている。社説は「最も重要な問いは、警察の介入が賢明だったかどうかだ」としたうえで、「警察が自らの対応が過剰ではなかったと主張するなら、むしろ独立した調査を歓迎すべきだ」と訴えている。

 その一方で、同紙は「ゴキブリ・キャンペーン」について、「現段階では感情的な動きだ」と見ているようだ。しかし、だからといって、そこに集まった若者たちの声まで無視してよいわけではないという。

 「政府は今こそ現場の声を真摯に聞き、若者がなぜ動揺しているのかを理解し、共感を持って彼らに手を差し伸べるべき時だ」と強調している。

怒りの根にある失業、資金停滞、そして物価高

 インドの英字紙ヒンドゥーも、7月23日付の社説「All is not well(すべてが順調なわけではない)」でこの問題をとりあげ、「この暴力事件は完全に回避可能だった」との見方を示した。

 社説によれば、抗議行動が激化したのは警察が武力に訴えた後だった。政府や警察がもっと早い段階から若者たちと「対話」をしていれば、衝突は回避できたはずだと主張する。

 さらに社説は、「さらに重要なのは、今回の怒りを国家試験の問題漏洩だけに結び付けないことだ」と指摘する。

 「この怒りを単なる試験問題に起因するものだと解釈するのは誤りだろう。抗議活動は、全国の若者を圧迫する失業、賃金の停滞、物価の高騰などに対する、より広範な不満へと次第に結晶化しつつある」

隣国紙が見るモディ政権最大の試練

 隣国パキスタンでも、この問題は深刻に受け止められている。英字紙ドーンは、7月23日付の社説「Modi unnerved(動揺するモディ首相)」で、今回の抗議行動によって150人以上が負傷したと伝え、モディ首相にとって「これまでで最大の試練」になっていると指摘した。

 社説によれば、政府が突き付けられているのは、「インドの若者たちの未来はどうなるのか」という根本的な問いだ。しかし、モディ政権はそれに十分な答えを示せずにいるという。

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 ここで注目されるのは、インドの二紙と隣国パキスタン紙の見方が重なっていることだ。三紙が共通して指摘するのは、政府と若い世代とのコミュニケーションの欠如であり、「若者の声を聴く」ことができていないという問題だ。

 「ゴキブリ人民党」という風刺に多くの若者が引き寄せられた背景には、単なる一つの失言への反発ではなく、「自分たちの声が届いていない」という不満がある。ネット上の冗談として始まった「政党」が現実の抗議運動へとつながった事実は、若者の怒りの深さを物語っている。

 三つの社説が政府に求めているのは、その声を力で抑えるのではなく、まず耳を傾け、背景にある問題と向き合うことだ。

 

(原文)           

インド①:

https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-edit-page/let-truth-prevail/

インド②:

https://www.thehindu.com/opinion/editorial/all-is-not-well-on-the-protests-in-delhi/article71254382.ece

パキスタン:

https://www.dawn.com/news/2017705/modi-unnerved

 

 

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